元アルバイトが語る!意外と知らない ケンタッキーフライドチキン の作り方の秘密・おいしさの秘密!

INDEX
2019年8月24日(土)の朝、MBSの情報番組「サタデープラス」を観ていたら、懐かしい光景が映し出されました。(当日の番組紹介ページはコチラ)
それは ケンタッキーフライドチキン の 厨房 です。
https://twitter.com/KFC_jp/status/1165063364835344385?s=20
何を隠そう、私は学生時代 “ケンタッカー※” でした。
※ ケンタッキーフライドチキンでアルバイトする人 という意味の造語です。使っているのは私だけかもしれない。
番組内で、オリジナルチキン を作る工程が詳しく紹介されていて、なるほどコレは知らない人には興味深いよな…!と思いましたので、元ケンタッカー として、当日の画面キャプチャを引用させていただきつつ、補足を加えて紹介してみたいと思います。
お店で手作り への こだわり
私が ケンタッカー として ブイブイいわしてた のは20年以上前のことになります。
当時の記憶を呼び起こして紹介しますので、細かい点で現在のオペレーションと異なっている可能性があります。ただ、カーネル・サンダースさんの創業以来、変わらない味を守り続けているケンタッキーフライドチキンだから、そ〜んなに大それて変わってないと信じています。
それに、やはり「お店で手作り」にこだわっているケンタッキーフライドチキンならではのメソッドは、そうやすやすと変わってしまうものではないと ケンタッカー当時から感じていたからです。
朝早くから店長がコールスローのキャベツ刻んだりしてたもんな…
「サバキ」
オリジナルチキンを作るため、まず冷蔵庫から「フレッシュ」と呼ばれる冷蔵の鶏肉のパックを2袋出します。この1袋には鶏2羽分の肉が入っていますので、コレをひとつずつチェックし、選り分ける作業が「サバキ」です。
ちなみに鶏1羽から作られるオリジナルチキンは9ピースです。
2羽分の肉が入ったフレッシュ×2袋ですから、1回に調理するオリジナルチキンの量は36ピースということになります。
ちなみにオリジナルチキンには部位ごとに下記のとおり5種類の呼び方があります。
- ウイング (手羽先) 2つ
- リブ (アバラ) 2つ
- キール (ムネ) 1つ
- サイ (モモ) 2つ
- ドラム (脚) 2つ
覚えておくとちょっとイキれるかもしれません。「あ、オレ キール もらって良い?」みたいな。
すぐに 周りからの「イキんなや」って視線が突き刺さるでしょうけど。
で、この5つの部位の中でも、ウイング・リブ・キールが上半身で「ホワイト」、サイとドラムが下半身で「ダーク」と大別されていました。
食べやすいのは「ホワイト」、食べ応えのあるのは「ダーク」という感じでしょうか。
※ 個人的な見解です。ちなみに私が最も好きなのは「サイ」。ジューシーな”鶏モモ感”と食べ応えが最高です。
なので、例えばオリジナルチキンを2ピースで購入すると、「ホワイト」のウイングと、「ダーク」のサイのような組み合わせになることが多いです。
フレッシュはそれぞれの部位ごとに注意して サバキ を行います。
例えば上の写真のドラムは、皮がめくれあがっていたら被せてやります。キールに1枚だけマントのようについた皮も、クチャクチャになっていたら延ばしてやります。皮は揚げた際に縮んでしまうので、サバキの工程で整えておくと、出来上がりの見栄えがキレイになります。
他に、サイの腿の関節をグイっと曲げて脱臼させたりする作業もあります。これも揚げるときの圧力による変形や骨折を防ぎ、キレイに揚げるために重要な一仕事です。
その他、サバキの工程では、フレッシュについたゴミを取り除いたり、僅かにでも羽が残っていればムシったり、味以前に「地味だけど大切」な作業を行っています。
チェックや下ごしらえを行ったフレッシュは、「ホワイト」と「ダーク」に分けてバスケットに入れます。
脱脂粉乳的な液体に浸ける
バスケットに入れたフレッシュを、調理台に設置されているバケツに満たされた白い液体にバスケットごとくぐらせ、バスケットをゆすってフレッシュに液体をまんべんなく行きわたらせ、バスケットを持ち上げて液体を切ります。
勝手に「脱脂粉乳的な」と憶測で言っちゃってますが、この液体がツナギの役割を果たしているのと、”粉を水で溶いて作った白い液体が金属のバケツに入っている” っていう 作り方 と 見た目 のイメージが、昔私の実家で牛を飼ってた頃よく見ていた、子牛に与えるミルクが入っていた容器を彷彿させ、そう思い込んでいただけです。
ちなみにこの作業は、ホワイトから行います。理由は後ほど。
「ブレディング」
ツナギをくぐったフレッシュは、セメントを混ぜるトロ箱のように大きな樹脂製のバットに入った「フラワー」にダイブさせます。
ケンタッキーフライドチキンで言う「フラワー」は、単に「小麦粉」を英訳しただけではなく、小麦粉とスパイスやシーズニングをブレンドしたものを指します。
この「フラワー」まで、各店舗でブレンドしているんですが、これには深~い理由もあるんです。
※深い理由については別の機会にご紹介します
「ブレディング」とは、フレッシュに「フラワー」をまぶす工程です。
「フラワー」にはスパイスやシーズニングも入っていますので、この工程でオリジナルチキンの味がほぼ決まってしまうという重要な工程です。ですから「ブレディング」の手順には明確なルールがあります。
両腕のヒジを曲げ、ヒジから先をフォークリフトのように「フラワー」の中に突っ込み、肉の下に潜り込ませて肉をリフトアップし、バットに落下させます。
今度は散らばった肉を、UFOキャッチャーのアームのように腕を両側から手首の上辺りまで突っ込んで、むしろ「フラワー」を持ち上げるような感じで軽くリフトアップし、バットの中央辺りに 転がします。
マニュアルには この作業を 〇回繰り返す と明記してあったような気がしますが、詳細な回数を覚えていません。なにしろ数回繰り返し、肉に「フラワー」をまぶします。
ワンシェイク・ワンタップ
多分 ケンタッカーの合言葉的なワードだと思う「ワンシェイク・ワンタップ」。
これは「フラワー」をはたく動作のことです。画像で見てみましょう。
コレは「フラワー」がまぶされたウイングを両手にひとつずつ持っているところです。
まず「ワンシェイク」。ウイングを掴んだまま手を上から振り下ろし、ピタッと止める。
ダンディー坂野さんの「ゲッツ」を1.5倍くらいの勢いでやる感じでしょうか。
これで慣性の法則に従って余分な「フラワー」が振り落とされます。
次に「ワンタップ」。「ワンシェイク」したウイングを持った両手を気持ち左右に開いて、今度は軽く左右の手首の内側同士をトンッとぶつけ合います。香水を手首につけてクルクル擦り合う部分です。
するとタップの衝撃でより強力な慣性の法則が作用し、更に余分な「フラワー」が振り落とされます。
これで肉はちょうど塩梅良く「フラワー」がまぶされた「揚げる前のオリジナルチキン」状態になるワケです。
カゴに並べる
「ワンシェイク・ワンタップ」を行ったチキンは、フライヤーに入れて揚げるためのカゴに並べます。
カゴは跳ね上げ式の3段重ねになっているので一番下の段からチキンを並べなくてはなりません。
この揚げる際のカゴにチキンを並べる位置にもルールがあります。TVでは細かく紹介されていなかったので詳細は省きますが、大まかには、「ホワイト」が下の段、「ダーク」が上の段、というイメージです。
なので、ブレディングは、下の段に並べる「ホワイト」から先に行う必要があるんですね。
間違えてダークを先にブレディングしてしまうと、カゴに並べる作業が数倍面倒なコトになり、すごいタイムロスになります。
ちなみにこの時、ウイングは、手羽先部分を折りたたんで手羽元の身の部分に引っ掛けて成形する作業(私は 「トリ4の字」と呼んでいました)をして並べます。
今度、ケンタッキーフライドチキンのウイングを食べるときには、その形状にも注目してみてください。しっかり技キマってますから。
「ドロップ」
カゴにチキンを3段並べ終わったら、専用の取っ手を使ってカゴを持ち上げ、フライヤーまで運びます。
「ドロップ」とは、フライヤーにこのカゴをまさに “ドロップさせる” 、つまり放り込む工程のことです。フライヤーも予熱が完了するとディスプレイに「drop」と表示されていました。
この「ドロップ」の工程がオリジナルチキンを揚げる際に最も力がいるところなので、10代の私は いかに男らしく、格好よくドロップさせるか にはこだわっていました。
私がシフト入れてた時間帯は、だいたいキッチンひとりだったけれども!
揚げる
私は オリジナルチキンを食べるとき、ドラム(脚の部分)の太ッとい骨以外はだいたい骨までバリバリ食べてしまいます。
オリジナルチキンは専用の圧力釜フライヤーで高圧のもと揚げられているので、骨まで柔らかいんですね。だからといって鶏の骨まで食べるのはリスクが高いかもしれませんが…。
このデカいハンドルのついた専用のフライヤー。私が働いていた店舗では恐らくこのフライヤー固有の商品名で呼んでいました。
「ポットショット」だとか「フリップフロップ」だとかみたいな、小気味よい響きの名前だったような気がするんですが…。
15分程度圧力をかけて揚がると、フライヤーの圧力を抜き、カゴを持ち上げてフライヤーのフチに引っ掛けます。
「ボーンダウン」
「ボーンダウン」も一種おまじないのようなもので、「揚がったチキンをトレイに並べる時には 骨を下にして 置きなさい」っていうルールのことです。
こんな風に揚がったオリジナルチキンを、保温器に入れるためのトレイに並べて行きます。
このトレイの並べ方にもルールがあり、だいたい下図のように並べなければなりません。
フライヤーの手前のスペースにトレイの端を載せ、左手でトレイの反対の端を支えて、トングで順番にチキンを並べながら、そのロットでの出来栄えを自画自賛したり反省したりします。
全ての工程を丁寧にこなすと、やはりキレイなチキンが揚がります。
焦って作業したことが最も顕著に見た目に表れるのが ドラム です。サバキからブレディング、ワンシェイク・ワンタップをおろそかにすると、足首の部分と ふくらはぎ の部分をつなぐ皮が千切れて骨が露出した状態になります。
※ トレイに並べる時やカウンターで箱に入れる時に、トングや他のチキンに当たって破れてしまうこともよくあるので、お客さんの手に渡った時に皮が破れていたからといって、キッチンのケンタッカーが手を抜いているというワケではありませんからね!
ジャーン!オリジナルチキンのできあがりです!
食べたくなるなる、でしょ? Finger licking good!! な ケンタッキーフライドチキン、次回召し上がられる際には、 カーネル・サンダースの伝統を受け継ぎ奮闘する ケンタッカー の働きにも想いを馳せてみてくださいね!