1. TOP
  2. メディア
  3. 孫正義のビジョンがすげェ進んでるな…と思って観てたら東日本大震災より前の話だった。

孫正義のビジョンがすげェ進んでるな…と思って観てたら東日本大震災より前の話だった。

孫正義と田原総一朗の対談をYouTubeで観ました。

知り合いに勧められるがままに、リンクで飛んで視聴したもので、ニコ生の放送だったようだというコト以外は、どういうバックグラウンドのイベントで、どんな経緯で開催されたものだったのかよくわからないまま観ていたのですが、観客には学校教員が多数いるようでした。

対談のテーマも、動画の最初に一瞬だけ「デジタル教育は日本を救うのか」というスライドが映し出されているので、教育関係者向けのイベントだったのかもしれません。

「情報社会」と IT教育

対談では、今私たちを取り巻く環境、あるいは私たちが住んでいる社会、時代が、「情報社会」に突入しているコトと、情報社会を生き抜いていくために日本が国家として取り組まなければならないコトを中心に、孫さんが意見を述べていきます。

そしてこれに対し、田原さんが、(私にとっては)絶妙なタイミングと角度・深さで質問したり解説したり、補足やツッコミを入れたりするので、ウワ、さすがだな‼︎と感心するやら感激するやらしている間に、前半・後半ともスルスル~ッと観てしまいます。

まず、これからクラウド・コンピューティングの時代がやってきますよ、と。
そうすると、これまで企業単体で勝負してきた、つまり大きな資本とたくさんの顧客を抱えてきた企業だけが勝つコトができていた時代から、上手に情報を扱うコトさえできれば、中小企業だって大企業と互角に渡り合うコトができるようになりますよ。そのためには今のままの教育ではダメだ、イノベーションだ、というお話なワケです。

私は大興奮。お笑い番組より、情報バラエティ番組よりエキサイティングです。
そして、置き去りを喰らっている観客の多さ。ソコで笑い起こしてどうするの?ってトコで笑ってる。綾小路きみまろライブの観客席を見てるみたいな感覚になります。

農耕社会工業社会情報社会

日本における(世界規模でも同じ頃に同じようなコトが起こっていますが)社会の移り変わりとタイミングを分析すると、

江戸時代までの「農耕社会」

明治維新後の 「工業社会」

現代の「情報社会」

と変遷してきたと言えるそうです。第一次産業が中心で、人の手による生産・加工だけが行われていた農耕社会。そして機械によって人間の身体能力(孫さんの言葉を借りると「筋肉」)を延長させ、大量生産が可能となった「工業社会」。つまり、

  • 手で作っていたモノを機械で一気に作れるようになった
  • 足で歩いていた距離を車で一気に移動できるようになった
  • ラジオ・テレビで情報をいっぺんに送ることができるようになった

というような大きな変化が起きたというコトで、この「農耕社会」から「工業社会」への移行が、人類史上最大のパラダイムシフトであったと言えます。

農耕社会ではとにかく人手が必要だった。アメリカ南部では、大規模な農園を経営するためにアフリカから黒人を奴隷として連れてきて、白人がマネージメントし、搾取していた。

同じ頃日本では江戸時代、農民が武士のマネージメントの下で農業に励み、搾取されていた。

再びアメリカに視線を戻すと、これからは工業時代だ、大量生産だ、人間の手でチマチマやるんじゃない、機械だ、蒸気機関だ、と北部の方では言っている。これまでの農耕社会とはまったく違う社会の枠組みを作るんだ、南北戦争だ。と、いうワケで、農耕社会の枠組みを取っ払って、まったく新しい社会を1から築いた。コレがシビライゼーションだ、コレはシビルウォーだ。
で、その工業社会としての新しい枠組みには奴隷制度なんてないワケなんですね。日本では奴隷解放のための戦争、くらいにしか教えられていないのではないか、と孫さんが言っています。

この工業社会への移り変わり、工業社会を象徴する工業社会の産物「蒸気船 = 黒船」に乗って、世界中に工業製品を売りに行った。
そして日本で黒船を見た吉田松陰らは、ガーン!と衝撃を受け、これはすごい時代が来るぞ、というコトを予測したワケですね。

工業社会が黒船で始まったなら、情報社会は何で始まる?

それでは工業社会が成熟してきて今度は何が登場したのか。孫正義さんが見たものは マイクロコンピュータ です。大学1年生の時に読んだサイエンス雑誌で、指先に載るコンピュータチップの拡大写真を見て、孫正義さんは第一印象で、未来都市の設計図かと思ったそうです。そしてそれが、中にトランジスタを内蔵したチップだと理解すると、ガーン!と衝撃を受け、人類はなんとすごいものを発明したのか、と涙を流したそうです。

そしてこのマイクロコンピュータの登場がきっかけで、世界は工業社会から情報社会へのパラダイムシフトを開始し始めるのです。ゆっくりと、いや、これまでの時代の流れと比較すると驚異的な速さで…。

工業社会と情報社会の違い

かつて工業社会をベースに、日本はのし上がりました。
外国が発明したものをマネして、より頑丈で、精密で、美しいものをたくさん作れば、それがどんどん売れる。日本は1990年頃は国際競争力世界1位でした。これがこの後20年間で27位まで転落します。

工業社会が成熟し、他国でも日本と同じ程度のクオリティで生産できるようになったら、人件費の高い日本で生産することは非効率的になります。

ものづくり = 生産業 ではないのです。それでも、メイド イン ジャパーン だ!っていつまでもすがりついている。あるいは、すがりつくしかない。

これは、日本が社会全体として、国家として、情報社会へパラダイムシフトできていない、しようとしないからだ、ということなんです。

「生産業やってちゃダメだ」って言い切ったのが…

スティーブ・ジョブズです。
彼はアップル社を半ば追放のようにして去った後、危機を迎えた同社を救うべく、CEOとして舞い戻り、最初に行ったことは、アップル社の自社工場の売却です。
売上の殆どがハードウェアだったアップル社なのに、わざわざハードが生産できない状態にしてしまったのです。

ジョブズの考えはこうです。

  • ウチは生産業じゃない
  • ウチの社員にコンピュータの組み立てはやらせない
  • ウチは頭で勝負だ。素晴らしい商品を次々開発するぞ
  • ウチの社員には生産業より良い給料で、生産業よりエキサイティングな仕事をさせる

そうして、生産はアメリカより賃金の安い台湾の製造業者に委託するスタイルを確立するのです。そしてその台湾の業者は、さらに賃金の安い中国に工場を構え、アップル社の製品を生産します。
アップル社の社員は、より良い製品の開発に注力し、後は皆さんの見ているとおりになった、と。

同じことが日本でも起こらないといけない

まず、日本の産業で、情報関係産業に従事している労働者は全労働者数の3%程度です。
残りの人は筋肉を使って労働しています。

孫正義さんの理想とする割合は、30パーセントの人間が情報関係、そしてそれ以外の産業でも、ITを駆使して働く状態であること…IT農業であったり、ITサービス業であったり、IT生産業であったり…。
きっとそのくらいITに溢れた環境になれば、IT専門に従事する人間が3人に1人程度必要になってくるのかな…と私は勝手に解釈していました。

そしてその社会を支えるのは、クリエイティブな人間の頭脳です。
どんどん発想が湧き出る。仲間とコミュニケーションをとって的確な判断ができる…といった能力。

ところがこういう能力って、今の日本の教育で実現しますか…?

時代にあった教育スタイルがある

かつて、農耕社会であった頃の日本、江戸時代までは、「学問」と言えば儒学であったり、漢文であったり…そういった「侍たるべき素養」としての学問でした。
お米や農作物を作るためにには、そしてそれらを対面で販売するためには「読み・書き・そろばん」ができれば十分でした。

これが明治時代に入り、工業社会が成立すると、ガラッと変化します。
工業製品を大量生産するために、数学、科学…、コミュニケーションの幅も広がり、国語、外国語、地理や歴史も必要になりました。
戦後、世界との格差をいち早く埋めるためには、頭を使ってアレコレ考えることよりも、丸暗記した方が早かった、という背景もあったのでしょうか、今に続く詰め込み教育です。

正解以外は全部不正解、というスタイルに孫正義さんは首を傾げます。
「1192年 鎌倉幕府が開かれる」コレを「イイクニ…」とか言って丸暗記させる。テストで「1191年」って答えたら、バツ! 彼に言わせると、長い歴史の中で1年くらい誤差の範囲じゃないか、というのです。コレは正直、目からウロコでした。そして、大変気に入りました。2017年現在、1192年ではなかった、ってコトになってますよね?本当、誤差なんですよ。それよりも、例えば幕末の物語などを読んで、幕末の志士たちの気持ちに想いを馳せてみる、ドラマを感じてみる方が、よっぽど記憶に残りやすいし、面白い。

教員が授業に割くことのできる時間の割合が、日本は他国と比較して低いようです。1日労働時間は長いけれども、その中で授業は37%。他は雑用であったり、採点であったり、次の授業の準備や、役に立たない会議だ、と。そんな中で、少しでも効率化を図るためには、テストの問題はマルかバツしかつけなくて良い形式、授業は丸暗記させる形式、入学試験も暗記力を問う形式…。

これでは、情報社会が日本にもたらされません。
高い人件費で、ほそぼそ生産業を続けていく。2040年頃にはGDPが世界8位に落ちる見込み。7位はインドネシア、日本がODA支援を行っていた相手に見下ろされるハメになり…。

そこでブッ込まれるのが 電子教科書 と IT教育

じゃぁどういう教育が情報社会における教育なのよ!
孫正義さんは、iPadを片手に熱弁します。

タブレット端末に教科書はいくらでも入る。暗記しなくても、検索すれば調べたいことは調べられる。
電子教科書で歴史の幕末の辺りを読むと、黒船が浦賀沖にやってきて、そこに吉田松陰が小さな舟で近づいていく写真…。そこでこの写真をタップすると、この写真の続きが動画で再生されて、松陰は投獄され、最期は遠いアメリカを夢見ながら処刑される…。こんなのだったら生徒がオォ〜ッ!て、前のめりに喰いつくでしょう。それとも「○○年 ペリー来航」、「○○年安政の大獄」の方が良いに決まってる、と…?

そしてタブレット端末はインターネットに繋がっているから、通信が可能。
世界史のひとつの事件について、当事国同士の子孫たちで、どう思うのか、テレビ通話を使って英語で議論する。こういうことは可能な話なんですよね。

ただし、社会全体でインフラ整備も必要だし、教員の価値も全く変わってくる。
教師が知識を与えるんじゃなくて、教員はコーディネーター的に、教室にテーマを投げかけ、議論を巻き起こすことが仕事になります。そのためには今以上に教師としての知識は必要になるし、「でもしか教師」なんて以ての外だということです。これがまさに、先ほどのITを駆使した働き方になる。

パラダイムシフト、これは社会の枠組みを全く新しいものに創り変えるコト。
今この時点で想像できないってヒト、工業社会に取り残されてんじゃないですか…?

かくいう私も、取り残されてるかもしれません。
2017年にこの動画を観て、なるほど…!と思ったんです。
コレ2010年に放送されたものだったんです。東日本大震災よりも前。
iPadも出たばっかりで、まだ「タブレット端末」という呼び方もなかったようですから…。