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豊北町のデッカい空き家「遊休公共施設」を考える(まちづくり協議会 活性化部会)

INDEX

  1. 廃校利活用の現状
    1. 豊北町の事例
    2. 窓口担当者ガチャ
  2. 行政面の実情
  3. おわりに

9月18日の「ほうほく未来応援隊」キックオフ役員会から2日後、豊北地区まちづくり協議会 活性化部会が招集されました。

招集したのはこのわたし、活性化部会長のシンです押忍、こんばんは。

豊北地区まちづくり協議会 活性化部会は、その名のとおり豊北町の活性化を図る様々な取り組みを打ち出すことを担う部会です。

オレら イベント屋 じゃないんで

ということを常に意識してないと、やたらとイベントを打つことに偏りがちな傾向がありましたが、今年度の体制では「空き家対策にも力を入れたい」というメンバーも参加してくれています。

「空き家対策」は、先日の「ほうほく未来応援隊」でも取り組むことになっており、わたしたちまちづくり協議会との連携も重要だと考えています…が、連携っていうか…それ以前に、未来応援隊 と まち協 で結構な人数のメンバーがカブってるんですよね。

正直なところ、この辺りの「メンバーのカブり」を うまいこと整理したいな、とは思ってます。

同じようなことを、同じようなメンバーで話し合う会議」が複数あるので、やる気のある人ほどたくさんの団体に呼ばれ、会議ばっかり多くて大変な目に遭うという状況になってるので…。

ちょっとこの件はまた改めて掘り下げることにしましょう。

ただ、空き家対策については、ちょっとラッキーなこともあって、それは…

「ほうほく未来応援隊」は、

小学校の存続のために、移住者のための住居としての空き家対策を進めたい。

っていう組織なので、それなら まちづくり協議会は、

閉校した学校の校舎など、遊休公共施設の利活用や、空き店舗を活用した活性化などを重点的にやっていくぞ!

…という棲み分けができそうなことです。その中で、お互いに情報共有しながら効率よく大小の空き家問題が解決していくといいなぁ、と。

廃校利活用の現状

全国的には廃校となった学校の校舎を利活用して地域活性に結びつけているという事例はあるようで、ニュース等で目にすることもよくあります。

民間に管理委託して、宿泊施設にする、図書館にする、などの活用をしている地域があったり、高知県室戸市では廃校を活用してその名もズバリ「むろと廃校水族館」をオープンしたりしていて、どの施設も素晴らしいアイデアを実現しています。

このような取り組みはメディアにもよく取り上げられるので、先に書いたようにニュースなどでよく見かけるようになります。すると私たちはあたかも日本中の廃校、閉校した学校の施設がバリバリ活用されているようなイメージを抱いてしまいがち。

そして、「編集」という魔法で、

みんなで「やろう!」って盛り上がって、ワーッと一気に創り上げました!

みたいな シンプルなサクセスストーリー を、勝手にニュースの向こうに描いてしまいがちです。

しかし実際には、うまくいっている事例ってごく少数で、実現までに数々のハードルをクリアしていたり、地域がそういうイノベーションに徐々に積極的になったり…みたいな、長い年月をかけた努力や、住民・行政の意識改革など、ニュースには映らないしっかりした下地作りがあって、ギリギリChopで、なんとかウルトラソウルできてるってもんじゃないかな…って思うんです。実際にまちづくり協議会の活動をしているとなおさらに実感します…。

豊北町の事例

豊北地区まちづくり協議会 活性化部会のメンバーには、統合で閉校となった小学校の施設を利用し、卓球など地域住民のレクリエーション活動を行っているAさんがいます。

ただAさんは、最初から地域住民のレクリエーションのために小学校を利用したかったわけではないんです。

とにかく、閉校になった学校の校舎を「大きな空き家」にしたくない

と言う思いから、Aさんは教育委員会や市役所と交渉を重ね、市議会議員にも相談したりして、いくつものアイデアを捻り出しましたが、現状でできることは地域住民のレクレーションぐらいしかなかった、というのが正直なところなんです。

早い話が、閉校した小学校の校舎を管理している教育委員会の「お役所仕事」が、Aさんはじめ一般の住民には理解できないし、教育委員会も納得のいく説明をすることができないので、Aさんはずっとモヤモヤしているってことです。

例えばAさんが教育委員会に

「教育委員会は廃校が有効活用されるよう、何か対策を講じていますか?」

と質問したところ、教育委員会の担当者は

「はい、市民の団体の利用には使用料の減免をしています」

と答えたといいます。

これを聞いて、Aさんは首を270°かしげてしまいました

イヤ、そういう意味ではなくて…

これを聞いてAさんに同情するタイプの人は、例えばこんなやり取りを期待してたんじゃないですか?

Aさん「教育委員会は廃校が有効活用されるよう、何か対策を講じていますか?」

担当者「はい、こんなイベントに使えます、こんなこともできます、っていう例を載せたチラシを作成して、町内各地区の子ども会や振興協議会に配付しました。グラウンドでキャンプファイヤーしたいっていう問い合わせもあったんですけど、どうやったら実現できるか、消防署に条件を確認中です…」

どう?これなら、

まち協「オォッ、じゃあちょっとまち協で 小学校の活用ワークショップ みたいなイベントやって、各団体が具体的にイメージしやすいようにいろいろ提案してみましょうか!」

みたいに、お互いに話が発展しますよね。

ただ、教育委員会には教育委員会の立場での見解もあるでしょう。例えば

教育委員会担当者(心の声)「閉校したとはいえ、『小学校の施設』として教育委員会が管理している以上、『学校施設の管理条例』(的な) ルールに則って管理しなければなりません。その条例で、学校施設を教育以外の目的で使用することはできないと定められており、使用できる団体にも制限があります。まだ処分できていない備品も多数ありますし、太翔館(歴史民族資料館)を整理した際に出た展示品の倉庫としても教育委員会が使用しています。使用料の減免も条例に規定されています。廃校を利用されたいのは分かりますが、現在も児童・生徒が通っている学校の運営にかかる業務も日々ある中で、正直なところ閉校した学校に関する業務の優先順位は低いんですよ。口が裂けても言えませんがねッッ」

みたいなところはあるんじゃないかしら、という気もするんですよね。
それこそ「オレら 不動産屋 じゃないんで…」的な。

この辺りが喰い違うと、

市民「なァ〜にが『使用料の減免』じゃ!『使わせてやってる』の態度が気に喰わんのォヨィョ…。どうやったら『使ってもらえるか』を真剣に考えちょりゃーせんのぃゃ。」

教育委員会「なんでもかんでも使わせて、収拾つかんなったらどうするんですか…。我も我もって来られても一件一件ヒアリングして審査して、みたいなことやってるヒマありませんし現実的ではないですよ…。条例読んで間違いなくそこに該当する条件なら使用できますし使用料の減免もできますから勘弁してくださいよ…」

みたいな展開になり、窓口レベルではたいてい「ルールはルールですから」に市民は勝てません。

なにかあったらどうするんですか
前例がないものはできません

という思考にならざるを得ない、公務員特有の環境というのもあるんですよね。

ただ、Aさんも、地域の教育を中心としたコミュニティのシンボルとして大切にされてきた小学校を、放ったらかして朽ちさせてはいけない!という素晴らしい信念で行動されています。なんならご自身の利益には1円もなりません。

いろいろと勉強される中で、Aさんは、文科省が「~未来につなごう~「みんなの廃校」プロジェクト」を大々的に打ち出しており、国土交通省も、集落地域における「小さな拠点づくり」にしっかり廃校の利活用を盛り込んでいることを知りました。

今や廃校の利活用は全国的に取り組むべき課題となっているのに、豊北町では議員が質問しても、

活用を検討している

という回答が繰り返されるだけで、ずっと変わらない。これでは検討すらしていないのと同じではないか。というモヤモヤが募りまくっているわけです。

この気持ちも痛いくらい分かるんですよね…。
ご本人も日頃の仕事がありながら、一生懸命、地域のためにいろいろ調べたり動いたりしている。真剣にやっているからこそ憤りを感じてしまう

窓口担当者ガチャ

ちなみにAさんは、ちょっと明らかにこれは教育委員会、苦しいんじゃないの…?っていう対応も受けたこともあるそうで…

それは、町内に2つあるうちの1つの Bこども園遠足での休憩場所として旧・C小学校を使用させてほしい、と教育委員会に相談したところ、Bこども園は 旧・C小学校と異なる地区にあるし、旧・C小学校区の子どもが園児にいないからダメだと断られたそうです。

同じ下関市民で、豊北町に住む子どもたちの遠足なのに、旧・C小学校区にないから、校区出身の園児がいないからNG…?

エッ、じゃあもうひとつの Dこども園 だったら?

Dこども園 の方は、所在している地区は旧・C小学校と異なるけれども、旧・C小学校区の子どもが園児にいるから、遠足の休憩場所として使用しても良い、というのがその教育委員会の担当者の見解だったそうです。

これはさすがに意味が分かりませんよね。

閉校になった小学校区に住んでいる園児が ひとりでも通っている こども園 であれば、たとえ他の園児はみんなよその校区に住んでいても、全員が遠足の休憩場所に小学校を使ってもいい。

でもひとりもいなかったら全員ダメ…。

役所の担当者のアタリ・ハズレは本来あるべきではありませんが、現実には起こります。

このような対応、やり取りを繰り返してAさんは、小学校の活用プランとして、宿泊施設飲食店キャンプフリーマーケットなど、地域住民向けのものから観光客向けのものまで様々なアイデアをストックしていたのですが、

「結局、地区内の住民だけで、シンプルに完了する使用方法でないと許可が下りないんだな…」

と悟り、地域住民のレクレーションという使用方法で許可を得て、小学校を活用できるようになったということです。

トッホホ…「閉校になった小学校を空き家にしてはいけない」っていうシンプルで温かい気持ちは本来とても素晴らしいことなのに、なんだかため息が出ちゃう後味の悪さです…。

行政面の実情

ちょっと話は変わって、市の所有している「財産」には、「行政財産」と普通財産」という2種類があるそうです。

行政財産

これは、市や教育委員会などが、何か目的を持って所有しているものです。

先の例でいう、「閉校になった小学校」も「教育のために使用する」という目的を持って教育委員会が所有し管理しているので、一般市民が使用するためには厳しい制限があるわけです。

このルールに基づいて、旧・滝部小学校の校舎が「歴史民族資料館」として教育的に活用されてきたと聞きました。

普通財産

一方で「普通財産」は、乱暴に表現しちゃうと「ただ持ってるだけ」の施設です。
「貸す」「売る」「捨てる」などの活用・処分ができます。

移住者向けの住居として「豊北ハイツ」を2棟リノベーションできるのは、豊北ハイツが市の普通財産だからです。

これに対して「市営住宅」は「経済的な事情等で済むところが確保できない人のため」という目的を持って市が所有している「行政財産」なので、たとえ100戸も空きがあっても、移住者に Welcoooooome!! って言って貸し出すことができないのだそうです。

その代わり、例えば住民が火災に遭って家が全焼してしまった、という場合などには、つなぎの住まいとして入居することもできます。

でも普通に考えて一気に100人も入るはずのない無駄な市営住宅なんか早く普通財産に切り替えて、民間に運営させるなり、市が直接移住者に貸すなりしたらいいじゃん!

って誰もが思いますが、そうもいかない事情があるようなんです。何なんでしょうね?常に大災害を警戒してるとか?

他にも、たとえばいくつかの小学校は耐震工事が未施工だったり、地籍調査が完了していない地区があって、法的にも譲ったり貸したりする準備が整っていない地区があったり…と、遊休公共施設の利活用には解決すべき問題が山積みです。

ちょっと考えても、豊北総合支所や地域住民の有志だけで解決できる規模の問題ではありません。

例を挙げると、

空き家バンク事業をもっと積極的に進めたら?

という意見は割とすぐに出てきます。空き家バンクに登録するための条件って実は非常に緩くて、簡単に登録できるそうなんです。

ところが、空き家バンクの担当部署「住宅政策課」は、下関市役所 本庁 にある部署で、豊北町からは車で1時間かかります。

豊北総合支所には「住宅政策課」に該当する部署がないので、総合支所に相談に行っても、詳しくわかる人がおらず、結局本庁に回されてしまうんです。

かといって、豊北総合支所に「空き家バンク」の窓口を、職員を充てて設けたとすると、他の業務が回らなくなってしまう。

PASONAの瀬川さんを「地域活性化起業人」として迎えているように、市内の不動産業者さんを「空き家対策請負人」みたいな感じで招くことはできないの?

と言ったらみんな黙ってしまう。

みたいな、「これがベストではないことは明らかだけど、改善しない理由もはっきりしない」ってことって、対・行政に限らず生きていると結構あります。

「君みたいに勘のいい子は嫌いだよ…」みたいな。

おわりに

今回、ちょっと奥歯にものの挟まったような表現になっちゃいました。
いろいろ批判しきらず、擁護もしきらず…。

これはわたしが公立大学の事務職員として、市に沿った手続きや事務の進め方で10年以上働いてきて、日々感じているもどかしさなどが、良くも悪くも今回の住民・行政両方の登場人物の心情と少しずつシンクロしちゃって、立場がどっちつかずになっちゃっているからです。

日頃、市の職員の方と一緒に働いていても未だに理解できない謎カルチャーがあったり、「こうした方が絶対いい」って分かっていてもそれをやってはいけないっていう、プロレスの「受けの美学」にも似た「公務員の美学」みたいのがあったりするくらいだから、窓口でしか接することのない市民の皆さんには「なんで!?」ってことはメチャメチャ多いと思います。

ちょっとこういう部分のズレや誤解を、ガッツリ解消できる試みを企てたほうがいいのかな…という気がしています。

ちょっとアイデアというか、イメージはありますので、改めて記事にしますね。