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良い大晦日① 薪割りと祖父

INDEX

  1. 早速薪割り開始!
  2. 薪割り道を見出す
  3. それはさておき、やり方が正しいか否かは別物
  4. そして、また始める。

我が家の暖房器具の主力は薪ストーブです。

薪がないと使えませんから、暖かい季節のうちに薪を準備しておかなければなりません…

…女房子供よスマン、オレ今年はサボっちゃったね、少し。

共働きで日頃は日曜日しか家族3人で過ごす時間がないので、日曜日は出掛けることが多く、また猟友会の巻猟にも参加したいので、どうしても薪割りが後回しになっていました…。自分勝手でスマン、女房子供よ…。

今シーズン我が家は深刻な薪不足に悩まされるでしょう。

夏に玉切りしたまま、薪棚に転がっているヒノキが少し残っています。

本来は薪割りをした状態で乾燥させるべきなのですが、この際背に腹は代えられません。

針葉樹でも竹でも燃やせる鋼板製、モキ製作所の薪ストーブ、独自開発のモキプレートによる、驚異の2次燃焼を実現!ですから、薪割りさえすればきっとなんとかなる…!

…という期待で、大晦日の今日、薪割りすることにしました。

早速薪割り開始!

玉切りしたヒノキの丸太を、ゴロゴロとラジオフライヤーで運んでいきます。

薪割りする場所は、庭と畑の間、芝も生えていない、砂利やコンクリも敷かれていない土の上です。雑草が生えています。

きっと切り株のような薪割り台があったほうが、作業が楽で安全でしょうし、見た目も様になるのでしょうが、残念ながらありません。

丸太をひとつずつ、雑草の上に立てて、斧を振りかぶり、一瞬の精神統一の後、一気に丸太に振り下ろします。

この時、斧が丸太の「あるポイント」を直撃すると、音も、見た目にも、見事に「パッカーン!」と真っ二つに割れます。

薪割り道を見出す

この「あるポイント」が、イコール 丸太の切断面の「中心」ではないところがミソです。

丸太の直径や年輪の具合、節の有無などで微妙に異なる、パッカーン!と割れるポイントを見極め、できる限り省エネで斧を振り下ろす。

斧を握る手の位置も、左右の手がくっつき過ぎると狙いが定まらないし、離れ過ぎると力の効率が悪い。

薪を載せる台座もないので、腰をできるだけ落として足を踏ん張り、丸太に斧が直撃する瞬間、垂直方向だけに力がかかるよう、全身でコントロールする。

ここに何か精神修行的要素を感じます。”斧と己、薪と大地、精神と天、それぞれが共鳴し合い、そして全てがひとつとなり、迷いと共に薪を断つものなり” みたいな。中学2年生的な発想ですが。

しかし少なからず、心を落ち着けて、集中して黙々と薪を割り続けると、なにか新鮮な気持ちになるものです。大晦日という日も影響して、なおさら清々しい気がします。汗が心地よい。

薪割り。始めるまでは面倒くさいが、始めるといつまでも続けてしまうもの。

それはさておき、やり方が正しいか否かは別物

一昨年初めて薪割りをした時、親父が、亡くなった祖父がまだ風呂を薪で沸かしていた頃に使っていた斧と、丸太を斜めに寝かして割る時に使う枕のような木の道具を出してきてくれました。

斧は、まぁ古い斧です。古びていて、祖父の汗で染められたような風合い。良い雰囲気の道具です。

しかしなぜか私には斧よりも、その「枕」のような道具が気になりました。厚さ5cmくらい、幅が20cmくらい、縦に10cmくらいの板のようなもので、丸太を乗せた時に安定するよう、丸く削ってあるもので、私のイメージしていた「薪割りに使うもの」とはかけ離れたコンパクトな代物で、意外だったことを覚えています。それこそ先述の、デカい切り株のような台こそ似つかわしい、と思っていたからです。

私は子供の頃、祖父が薪割りしているところを見たことがありません。
そしてまた親父も、祖父の薪割りを手伝ったことがなく、祖父が全盛期を過ぎて衰え始める頃には風呂も薪で沸かさなくなっていたので、誰も祖父の薪割りの技術を継承していません。

一昨年のその日、初めて薪割りをする私が、 “こんなモンか⁉︎” と、なんとなく枕に丸太を載せ、力いっぱい振りかぶって バッカーン‼︎ と叩き割る様子を親父が見て、「爺さんはなんかこう、力をそんなに込めんと楽に割りよった気がするんじゃがのォ…」とつぶやきます。

私が振り抜いた斧は丸太を割って枕に叩きつけられ、丸く削られたカーブの曲面に刃を突き立てます。

トップカーいっぱいの丸太を薪にする頃には、使い込まれた味のあった枕は無数の傷でボロボロになってしまいました。私は本来の使い方ができなくて、恐らく見た目より繊細であったであろうその道具の生かし方を知ることができないまま、もはや役に立たない物にしてしまいました。

そして、また始める。

仕方がない。私は1から薪割り道を切り開いていくのです。今はまだ力任せにやっていける。
我が家で薪ストーブを使う限り、薪割りを続けていく。

そんな中で、私は年齢を重ね、腕力も落ちた、肩も動かなくなった、腰も悪くなった、それでも上手に薪を割るスタイルを、試行錯誤していくのです。

そして息子が将来、薪ストーブを使う、ピザ釜を作ってピザを焼く、ニシンのパイを作って孫のパーティまで魔女に届けてもらう、と言うのなら、その技術を伝えていこうと思います。