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家族の次に小さなコミュニティ「自治会」が何よりも大きかった話

INDEX

  1. 自治会って…?
  2. アイデンティティとしての「自治会」
    1. 自治会の「打ち上げ」カルチャー
    2. そして子どもたちもダークサイドに堕ちる

人のキャラクターや価値観は、その人の置かれている環境で決まるとすると、私のキャラクターや価値観が形成されるのに最も大きな影響を及ぼしたのは、「自治会」かもしれません。

自治会って…?

私がイメージしている「自治会」と、多くの人…特に都会の人がイメージする「自治会」には相違があるかもしれません。だって「マンションの自治会」とかあるんでしょ?それはきっと、私を育ててくれた「自治会」の環境とはいろいろと異なると思います。

私のいう「自治会」をイメージしていただくヒントとして、いくつか挙げてみたいと思います。

  • 「小学校区」よりも小さい規模のコミュニティで、私の通った小学校区には10余りの「自治会」があった

 

  • 「加入していない人」は基本的にいないので、「会」「集団」というイメージよりは「住んでいる地区」を指すイメージが強い

 

  • 小学校ではだいたい自治会ごとに登校班が編成されて、集団登校をしていた

 

  • 小学校の運動会は午前中で終わって、午後からは 自治会対抗 の「地区民大会」という 大人の運動会 が催され、なんなら小学校の運動会より盛り上がっていた

 

  • 運動会に限らず、自治会対抗の 球技大会や駅伝大会、凧揚げ竹馬大会など、年間を通して様々なイベントが開催されていた

 

  • 自治会内でも先述の地区民大会の選手選抜のための運動会が開催され、自治会内の「班」対抗で盛り上がっていた

 

  • その他にも、自治会内の観音様の縁日のお祭りやグラウンドゴルフ大会など、自治会内でのイベントも開催されていた(これらは現在も行われている)

…と、こういうのって、都会では「町内会」と呼ばれたりすることが多いのでしょうか?

私はよその地域のことを知らなすぎて、なんとなくテレビドラマなどで「町内会」と言っているのを「自治会」と脳内変換して捉えていました。
だって平成の大合併以前は、「町内」というのは私たちにとって、行政区としての「市町村」の「町」のことで、豊北町の「町内」と言えば小学校8つ分の広い範囲を指す言葉でしたから…。

ちなみに、加入している人は「基本的に」いないとしたのは、子供の頃をよーく思い出してみると、1件だけ恐らく加入していなかったんだろうな…という家が思い当たるんです。
今でこそ、自治会とは任意加入の団体だということを理解できるのですが、当時は 自治会の行事に全く顔を出さないなんて、かなり変な人 だと思っていました。

こんな風に、自分のところのスタイルがスタンダードと信じ込んでいる、他を認めない・受け入れない、っていうのは 田舎コミュニティ の良くない面としてクローズアップされがちですが、一方で、コミュニティ内でのつながりは非常に強く、面倒見が良いし、みんなで楽しむことに積極的です。

「地域みんなで子どもを育てる」が実現できる背景にはこういうカルチャーがあると思います。

アイデンティティとしての「自治会」

上に挙げたヒントの中にもチラホラとその片鱗が見える気がするのですが、私が子どもの頃は、田舎で娯楽も少ない環境、インターネットも高性能なテレビゲームもない時代に、「楽しいことは自分たちで作ろう!」という気概を当時の大人からビシビシ感じていました。

そして楽しみを作り出すこと、関わる人を楽しませること を 自分たちの愉しみ として、何にでも全力で取り組む大人たちの姿を見てきました。

しかもその大人たちは、テレビやYouTubeで見る、取ってつけたような爽やかハイテンションの ハリキリお父さん ではなく、日頃は農協や国鉄で働く「◯◯君のお父さん」だったり、何ヶ月かいないと思ったら突然戻ってくる船乗りの「ミッちゃん」だったり、生活感ゴリゴリの 「近所のオィさんたち」 だったわけです。

全然キラキラしてないけど、めちゃめちゃギラギラしてます。

地区民大会では優勝トロフィーと副賞のスーパーの商品券を巡って大のオトナが真剣に競い合い、ムキになって野次を飛ばし合い、結果はどうあれ、終わったら各自治会の 集会所 に帰って 打ち上げ をする、とかね。

自治会の「打ち上げ」カルチャー

そう、何よりこの 打ち上げ が良いんですよ…。
なんなら打ち上げのために各種イベントを頑張ってる、みたいな。
「ビールのために草野球やってる」っていうオジさま方と同じ心理です。

打ち上げでは、集会所の広間に長いゴザを敷いて、法事で出すような座卓タイプの長机を並べ、酒盛りをするオィさんのシマと、お菓子とジュースでおしゃべりするお母さんと子どものシマに分かれてワイワイと盛り上がるわけです。

やがて子どもたちは外に飛び出して、集会所の周りやお寺の境内でカンケリとかして遊び始める…。

で、ちょっと休憩、ってジュースなんか飲みに集会所に戻ると、オィさんらはまだ飲ってる!

暗くなって、子どもとお母さんは片付けてもう帰りますよ!ってなっても…そう、オィさんらはまだ飲ってる!

結局、そのオィさんらの中にいる私の親父は、その日いつ帰ってきたのか知らないけど、寝室ではなくリビングに転がされ、夜中にとんでもない大イビキと遠吠えみたいな寝言と睡眠時無呼吸症候群の “…ンゴッッ!!” っていうアレを一晩中ヘビーローテーションで放ちアゲて家族に大迷惑(おーめいわく)をかけるっていうのが年に何度か繰り返される日常でした。

そもそも、例えば自治会のグラウンドゴルフなんかは午前中で終わるんです。
それからお弁当を食べながら打ち上げがスタートして、夜中まで飲んでるんですからどっちがメインか分からないって話なんですよね。

そして子どもたちもダークサイドに堕ちる

苦いビール飲んで、次の日は二日酔いで青い顔して…何が良くてそんな…

…と幼い頃は思ったものですが、これが不思議なもので、成長してくるとだんだんその様子が 格好良いもの に思えてくるんです。

自分はまだ子どもだから入れないが、オィさんらはイベントをやるごとに、本当に楽しそうに、苦いビールを飽きもせんと美味そうに飲んで、ワイワイ話をして、ずーっと爆笑している…良ェモンなのかな…いつか混ざってみたいな…。

と、思うようになってきます。

ただし、さらに成長すると、一旦は学校行事や部活やデートなどで、こういった自治会の行事から少し距離を置く時期がやってきます。

ちょうど反抗期とも重なって、ダサい田舎の行事に付き合ってられっか、今日はツレとカラオケじゃやかましい!と悪態をつくようになります。

私の場合は中学校を卒業後は寮のある学校に進学したのでなおさら日頃から地元にいないし、10代後半にはたくさんの行事をスルーしてきました。

私だけに限らず、進学や就職で地元を離れる子どもが大半なので、仕方ないことではあります。

それでも、自治会の運動会はゴールデンウィークにやってるし、自治会の観音様の縁日「十七夜」は7月中旬の土曜日だし、いくつかの行事に合わせて帰省すると、変わらず全力で楽しいことをやっている。

ちょっと社会に揉まれて、心身ともに少しすり減った気がする頃になって、懐かしさにほだされてプラッと自治会の行事に顔を出してみたら、

「よぉ帰ってきたの。堂々と飲めるようになったんじゃろ」

と、いつか混ざってみたかったあの「オィさんのシマ」に自然と招かれて、ホイッとコップ渡されて、瓶ビールを注いでもらう…。

あぁ、ここがオレの居場所なんだな…

と心の底から感激せずにはいられない瞬間です。

それからはもう、思い出話や、今やっていることや… いろんなことを話して笑って、あーもうちょっとやりたいな、っていうタイミングでお開きになる。

これでまた次の行事でも打ち上げに参加したくて張り切る…と。

ハイ、「自治会のオィサン」一丁あがり!

いいでしょ?ちょっと暑苦しいけど、こうやって私はできあがったんです。

家族の次に小さなコミュニティ、自治会のチカラ、これからの日本で見直されてほしいな…!